貧血
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貧血とは

貧血は全身に酸素を運ぶ赤血球の量が減少した状態を指します。酸素を運ぶ役割を持つ赤血球が減ると、体の組織に十分な酸素が届かなくなり、様々な症状が現れます。
特に多いのが鉄欠乏性貧血で、赤血球の主要成分であるヘモグロビンの材料となる鉄が足りない状態です。日本の成人女性の約4人に1人がこの貧血を経験しているといわれています。原因としては、食事からの鉄分摂取不足、月経などによる出血、妊娠や成長期の鉄需要増加などがあります。
貧血かどうかは血液検査で判断します。男性は13g/dL未満、女性は12g/dL未満、お年寄りや小さなお子さんは11g/dL未満のヘモグロビン値で貧血と診断されます。貧血が進行すると、日常生活に支障をきたすこともありますが、適切な治療によって改善することができます。
貧血は単独で起こることもありますが、他の病気のサインであることもあるため、原因の特定が重要です。当院では、患者さん一人ひとりの状態に合わせた診断と治療を行っています。

対象のお悩み

当院で行う貧血の治療内容

—一般貧血治療

貧血の中で最も多い鉄欠乏性貧血の治療を行います。この貧血は女性に特に多く、月経や出産、授乳などが関係しています。また、胃腸からの少量の出血や食事の偏りも原因となることがあります。
治療の中心は鉄剤の服用です。通常2〜6か月ほど継続して飲む必要があります。また、なぜ鉄が不足しているのかを調べることも大切です。女性なら子宮の病気、男性や閉経後の女性なら胃腸からの出血などがないか確認します。
当院では患者さんの症状や生活スタイルに合わせた鉄剤を選び、副作用を最小限に抑える服用方法をアドバイスしています。鉄剤には胃の不調や便秘などの副作用が出ることがありますが、服用のタイミングや食事との組み合わせを工夫することで軽減できます。
また、重度の貧血や飲み薬が合わない場合には、点滴による鉄の補給も検討します。これにより短期間で効果が現れることがあります。

—特殊貧血治療

ビタミンB12や葉酸が足りないことで起こる巨赤芽球性貧血などの特殊な貧血の治療も行っています。これらのビタミンは赤血球を作るために必要な栄養素です。
治療は不足している栄養素を補うことが基本です。ビタミンB12は注射や飲み薬で、葉酸は主に飲み薬で補充します。原因によっては長期間の治療が必要な場合もあります。
吸収障害が原因の場合、胃や腸の病気の治療も並行して行います。高齢の方は胃酸の分泌が減少し、ビタミンB12の吸収が悪くなることがあるため、特に注意して診察します。
また、極度の疲労や息切れがある重度の貧血では、症状を早く改善するために赤血球輸血を行うこともあります。ただし、輸血は一時的な処置であり、根本的な治療ではありません。

—予防と生活指導

貧血を予防するには、バランスの良い食事が何より大切です。特に若い女性に多い無理なダイエットや朝食抜きは貧血のリスクを高めます。
当院では次のような食事バランスをお勧めしています。



鉄分は肉や魚に含まれる「ヘム鉄」と野菜などに含まれる「非ヘム鉄」があり、前者の方が体に吸収されやすいです。また、ビタミンCと一緒に摂ると鉄の吸収率が上がります。
具体的な鉄分が豊富な食品としては、レバー、赤身の肉、貝類(特にしじみやあさり)、ひじき、小松菜、ほうれん草などがあります。お茶やコーヒーに含まれるタンニンは鉄の吸収を妨げることがあるので、食事の直後に飲むのは避けたほうが良いでしょう。
また、日常生活での注意点として、十分な睡眠と適度な運動も貧血予防に役立ちます。特に有酸素運動は血液循環を良くし、体内の酸素運搬効率を高める効果があります。
ただし、貧血と診断された場合は食事だけでの改善は難しく、医師の指導のもと適切な治療を受けることが大切です。自己判断で市販の鉄剤などを長期間使用することは避け、必ず医療機関で相談しましょう。

—経過観察と継続管理

貧血の治療を始めたら、定期的な検査で改善状況を確認します。通常、治療開始から2〜4週間後に血液検査を行い、ヘモグロビン値の変化をチェックします。
数値が改善しても、すぐに治療を中止するのではなく、鉄の備蓄を十分に回復させるために、症状が改善した後も2〜3ヶ月は治療を続けることが一般的です。
長期的な管理も重要です。一度改善しても、原因が解決していなければ再発することがあります。特に月経がある女性や慢性的な疾患をお持ちの方は、定期的な検査をお勧めします。
当院では患者さんの生活状況に合わせた個別の管理計画を立て、貧血の再発予防をサポートします。

主な検査内容

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—基本血液検査

赤血球数:血液中の赤血球の数
ヘモグロビン:赤血球内の酸素を運ぶタンパク質の量
ヘマトクリット:血液全体に占める赤血球の割合
赤血球の大きさと形:貧血の種類を判断する重要な手がかり

検査結果では、赤血球の大きさによって小球性(小さい)、正球性(普通)、大球性(大きい)に分類され、それぞれ原因が異なります。鉄欠乏性貧血では小球性の特徴が見られることが多いです。

—鉄の状態検査

血清鉄:血液中の鉄の量
フェリチン:体内に貯蔵されている鉄の量を示す指標
トランスフェリン:鉄を運ぶタンパク質
鉄結合能:血液中の鉄を運ぶ能力

フェリチン値は体内の鉄貯蔵量を最も正確に反映する検査です。この値が低下していると、体内の鉄が不足している状態と判断できます。ただし、炎症がある場合は実際より高く出ることがあるため、他の検査結果と合わせて総合的に判断します。

—原因特定検査

網状赤血球:新しく作られた赤血球の割合
ビタミンB12と葉酸:特殊な貧血の原因となる栄養素
便潜血:目に見えない腸からの出血を調べる検査
体の状態確認:目の下まぶたの色や爪の形など

貧血の原因が明らかでない場合は、胃カメラや大腸カメラ、婦人科検査などの追加検査を行うこともあります。特に40歳以上の方や、家族に消化器のがんがいる方は、消化管からの少量の出血が原因となっていることがあります。
当院では、患者さんの症状や検査結果に基づいて、必要な検査を適切に選択し、貧血の原因を特定するよう努めています。原因が分かれば、より効果的な治療が可能になります。